shunske Sato
佐藤俊介

violinist

conductor

teacher

はじめに

多才な音楽家である佐藤俊介は、バロック‧ヴァイオリンとモダン‧ヴァイオリンを弾きこなし、ソリストとしてもコンサート‧マスターとしても第一線で活躍している。さらに指揮者として、器楽アンサンブルおよび声楽アンサンブルと舞台を共にしている。

あらゆる時代のピリオド奏法が、佐藤をインスパイアする。彼にとって過去の演奏習慣にかんする知識は、音楽を現在によみがえらせる上で不可欠である。彼は、とりわけ19世紀の演奏実践をめぐる最先端の研究に通じ、この分野をテーマに講義やワークショップもおこなっている。

指揮の佐藤はもっぱら、小節や拍よりも長いフレーズを頼りに音楽を感じ表現するよう、奏者たちを鼓舞していた。調和と温もりが手に取るようにわかった。

BACHTRACK, 後藤菜穂子

(2023年3月)

心に響く音楽

佐藤にとって音楽は、共感、文脈、ニュアンス、優れたプレゼンテーションが必要とされるコミュニケーションである。音楽は、演奏者と聞き手、双方の心に響かなければならない。大バッハの息子カール‧フィリップ‧エマヌエルは、1753年に「まず音楽家本人が感動していなければ、他者の心を動かすことはできない」と書いた。この言葉は、今日もなお核心を突いている。

リスクを冒すこと

ニコラウス‧アーノンクールのモットーは「美は災難と隣り合わせにある」だった。コンサートではリスクを冒す必要があるのだ。それによって生まれうる美には、何かを試みるさいに起こりうるどんな“災難”にも見合う価値がある。

演奏は、良かれ悪しかれ、妥協も偽りもないときに成功する。自身の弱さをさらけだすこと。自分らしく振る舞うこと。今ここにいること。そうすることが、すでに十分難しい！

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佐藤俊介の装飾法とフレージングは時に独特であるが、それでも彼の演奏は、どこまでも自然に響く。ごく短い音符を弾くときでさえ、彼の音は芯と色彩をとどめている。（略）佐藤は、しばし引きずり、引っ張り、長引かせたのち、優美に着地してインテンポに戻ると、再び強拍で飛び立つ——まるでハチドリのように。

DE VOLKSKRANT, Merlijn Kerkhof

2018年11月

言語と発話

日本語と英語に囲まれて育ち、これまでフランス、ドイツ、オランダで暮らし‧学んできた佐藤は、五つの言語を話す。彼は言語と言語学を愛し、テクストや歌手たちと向き合うことに情熱を傾けている。“話される言葉”への強い関心は、歴史的発音や劇的雄弁術を追究する（長い）道程を佐藤に歩ませてもいる。

音楽とその向こうへ

佐藤は、音楽と他のパフォーミング‧アーツの融合にも進んで取り組んでいる。音楽が本来もつ可能性をさまざまに広げ‧探究し、それを観客と分かち合うことができるからだ。これまで、J.S. バッハの音楽に基づくオペラの創作に携わり、児童劇場や演出家たちやダンサーたちとコラボレーションを展開してきた。佐藤は、既存の楽曲のアレンジや楽器編成の書き換えにも大きな喜びを見出し、卓越した手腕を発揮している。